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読書ノート 第2回「農業で稼ぐ!経済学」

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農業で稼ぐ!経済学
--浅川芳裕(著),飯田泰之(著) --PHP研究所 --201107
この本は日本の農業に対する悲観論を見直し、
先進的な農家経営で農家がより豊かになる方法を提示した、3.11以降に出版された本である。


農水省のホームページを見ても3.11以降の農業の将来ビジョンが更新されないままの現状で、
日本農業のこれからに対する1つの答えを出してくれるのではないかと思い、思わず手にとった1冊(中央図書館で借りた)
(農水省の政策ビジョンが更新されてない?お前の探し方が悪いんだよここに書いてあるだろ!というご指摘ありましたらコメント欄にURLくださいませ)
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本書は大きく3つの内容に分けることができる。
1.日本農業悲観論に対する反論(1章2章3章)
2.先進的な農家・農業法人の実例を交えた農家経営の分析(4章5章6章)
3.3.11以降のビジョン(7章)

1.日本農業悲観論に対する反論の部分では、
「高齢化」「後継者不足」「耕作放棄地の増加」「先進国最低レベルの食料自給率」といった一連の負のキーワードに対して、
これは統計上のまやかしであり、実態を反映したものではないと反論している。
たとえば、「高齢化」に対しては、農水省が定める農家の定義「農地10アール以上、もしくは年間売上15万円以上の世帯」が
定年した年金生活の自給的農家や、たまたま実家に農地があり家庭菜園をやっているような層も含み、
農業の生産に寄与しないこれら農家によって底上げされている年齢であり、問題はないとしている。(このような年間売上100万円以下の自給的・零細・副業的農家が全農家戸数の5割を占める)

また、売上1000万円以上の販売農家や有料農業法人では、高齢化や後継者不足とは無縁であることも挙げている。

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「自給率」に対してはカロリーベース出される自給率からくりや、日本への食料禁輸措置や世界食料危機のリスクを唱える意見に対して反論をしている。
禁輸措置に関しては、過去にカーター政権のアメリカがソ連に対し食料の禁輸措置を行ったが、
カナダ、オーストラリア、アルゼンチンなどが商機として食料を輸出していた歴史や
その後禁輸解除を公約にしたレーガンが次の大統領選挙で当選したことなどから、
国策であっても自国の農家の商売や他国の輸出を長期間じゃましたりすることは現実的には不可能な話だと主張している。
さらに現在の日本の食料輸入国は友好的な先進国ばかりで、外交リスクも少ないと指摘している。
 食糧危機に陥る可能性に関しては、日本は北米、南米、オーストラリアなど北半球から南半球まで広い範囲から輸入しており
その広い地域が同時に不作に見舞われることは考えにくいとしている。
 この本には書いてなかったが、仮にそのような世界食料危機が起きて、食料、石油(耕作機械燃料、化学肥料、輸送燃料)が困窮する自体になっても
それに対応するマニュアルが農水省にはあり、米とイモが中心の食事になるが、毎日2020kcalの食事は確保できる試算がなされている。
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/pall.pdf

国産なら安全という信仰や農産物直売所の安全性にも疑問を投げかけている。
家庭菜園や零細農家の肥培管理はいい加減で、農薬も化成肥料も与えすぎていることが多く、
残留農薬など検疫が行われないまま出荷されている直売所野菜が、イメージ先行でもてはやされている現状は危険だと指摘する。


TPPに関しても反対する理由はないとしている。
すでに関税が低くでほぼ自由化されている野菜や花卉は、TPPへの参加でアメリカなどの他国の関税を引き下げさせることで
輸出機会が増えるとし、
米などは安いインディカ米が入って来ても外食産業に多少食い込むくらいで、個人消費は食味の良い国産米が中心で、輸入による影響はないだろうとしている。
現在の円高水準を軽くスルーしているような主張だが、筆者によると為替レートの影響はないという。
筆者は産業構造の大きく違う国と取引することでWINWINの関係になると説明している。
言いたいことはわかるが、それならTPPじゃなくて産業構造の違う国を選んで進めている現状のFTAでいいし、
ドル円76円の水準でまた下値ブレイクする予感ピリピリなのに、筆者が言うほど野菜や花卉に輸出競争力があるのかわからない。
特に原発の実害・風評被害でメタメタな今の時期に。

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2.先進的な農家・農業法人の実例を交えた農家経営の分析の部分では
ITの活用によるコスト削減や徹底した管理の事例を紹介している。ドラッカーの有名な問いかけ「あなたの顧客はだれですか?」を引用し
消費者を想定せず、ただ水稲や転作作物を作っている農家を批判し、マーケティングの重要性とバランスシートで経営を分析することを推奨している。
また例として、反収10万円の一般的な農地を、貸し農園にして1反(10a)を20区画に分けて1区画5万円で貸し出し
自分は先生として指導をするという体験農園で反収100万円を達成するという、作物を作る以外のやり方があることを紹介している。
ただ、個人的には1区画50㎡の農地を5万で借りる人がいるとは思えないのだが。都会なら成立するのかこの皮算用?
ちなみに我が交流センターの里山農園では1区画約80㎡を年間1万円で貸し出しております。なんて良心的!(http://www.senmaike.net/satoyama/nouen/index.html)

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3. 3.11以降のビジョンでは
チェルノブイリがあった旧ソ連ウクライナの復活に学べとして、世界有数の小麦輸出国に復活したウクライナの例を取り上げている。
ウクライナのように、国際社会に農地の実態を開示し、除染作業の計画を発表し、
第三者機関による調査を受け入れいち早く信頼を回復することが必要だと述べ、現在の政府の杜撰な対応を批判している。
そして、自然リスクを緩和するためコメの先物市場を導入するべきだとも述べている。
さらに、TPPに参加し、自由放任の政策を取るべきだとしながらも、
農家の自立を促すサポートやシステム作り行う必要があると述べ、まとめとしている。


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本書は3.11以降に出版された本であり、本文もそれに伴い加筆修正したと書かれているが、
3.11前から続く農業自由化論者の意見以上の新しい意見は見いだせなかった。
自分も3.11前までは農業保護論調には反対で、筆者の意見に同調していた部分も多かったのだが、
最近ではかなり迷いが生じてきている。


次回は反TPPの立場から書かれた「反TPPの農業再建論 田代洋一著」(これも3.11以降に書かれた本)を紹介します。
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テーマ : 田舎暮らし日記
ジャンル : ライフ

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