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読書ノート第3回

食料の世界地図 第二版 (原題 The Atlas of FOOD)
著者 Erik Millstine, Tim Lang 訳者 大賀圭治 中山里見,高田直也 
出版社:丸善株式会社 2009年
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世界における食料をめぐる問題を図解入りデータでわかりやすくまとめた本。
見た目は中学の頃使ってた地理の資料集(写真が好きで授業中ずっと読んでた)を思わせる。

イギリス人の作者が世界の食料に関する問題を40のトピックに分けて豊富なデータをもとに個別に解説しているため、
日本を対象とした記述はないが、読者は世界を俯瞰的に見ることで日本を再認識することができる。
扱う問題は食料生産高に始まり、分配の問題、機械化の普及度、農薬・化学肥料、土地所有権、
有機農業、貿易、補助金、バイオ燃料、外食産業、影響力を増す小売の実態などなど、
地図とグラフを使って一つ一つストーリーのある物語のように読んでいける。

トピックは一つずつ解説されているが、それぞれは相互に複雑に絡み合っている問題なので
一つの問題を解決しようとすると、もう一つの問題が悪化するようなこともあり農業食糧問題は複雑怪奇。
しかし、まぁ双方が納得できる落とし所というか、均衡点みたいなところは見えてくるのでそれをビジョンにすることが必要なのだ。
(まぁその均衡点が人によって違うから議会が紛糾するんだけど)


食料農業問題に関して一番厄介なのが、フードサプライチェーンの複雑化だ。
生産者と消費者との距離の拡大は、消費者から想像力を奪い、購入する際の基準を安さ、見慣れたブランドなど表面的なものに単純化させてしまう。
長く、複雑なフードサプライチェーンは、いずれ枯渇する石油に依存した仕組みによって成り立っている。
石油なしには、灌漑、肥料、農薬、船舶、トラックの利用は出来ず、長いフードサプライチェーンは持続的な農業とは程遠いものだ。
我々はスーパーで海外から季節外れの野菜を買ったり、厳しい規格と品質管理された商品を手に入れることができるが、
それは持続的な農業を推奨しない(形だけの表面的なアピールはしてるかもね!)小売業者の影響力を増すことにつながる。
厳しい契約とルール、スケールメリットを生かした物流網と在庫管理で効率化を最大化し、相対的にエネルギーの利用を低くすることに成功しているが、
地産地消や有機農業に化石エネルギー利用の絶対量ではかなわない。

現在大手小売業はプライベートブランドによって加工業者を完全な管理下に置き、利益を絞りとることに腐心している。
フードサプライチェーンの多くの段階の寡占化は、今の石油に依存した流通システムをますます強固にする。それによる危険性は用意に想像できるだろう。
彼らは化石燃料が利用できなくなるまで今の経済活動を続けるだろう。(石油の枯渇という単純なものではなく、従来より深い地層からの掘削による費用と価格の高騰、環境負荷の高い油井の利用までもが限界がくるまで続く。
その結果として、2010年ディープウォーター・ホライズンは原油流出事故を起こし、さらにカナダのオイルサンド(原油を含む砂)など環境負荷が高い油井に手が伸びている。経済コストに環境への影響が反映されていないから)
p.86ページには世界の小売チェーンの上位10社ランキング(2007年)が載っている。
一位はウォルマート、二位はカルフール、3位のテスコは聞いたことないがイギリスの会社らしい。セブンアンドアイは9位にランクイン。

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「ウォルマート従業員の給料なんてタダみたいなもんだぜ」
いや、それも問題だけど、今はそういうことではなく。

しかし、小売業者ばかりを槍玉に上げるのも冷静な議論ではない。
地産地消の話をしたが、それが
「地産地消がすべてを解決する答えなんだ、地産地消!石油を無駄に使って遠くから運んだ野菜なんか食べません。国産しか食べません。」という運動も
「なんだよそれ、バイアメリカン法かよ、きれいごと並べても結局ブロック経済じゃねーか、非関税障壁じゃねーか、先進国はいつも自分勝手だな」という
農産物の輸出で国を豊かにしたい途上国の発展する権利を奪うような後ろめたさも感じる。
(でもその国が、日本より階級格差が露骨で、日本が農産物を輸入しても利益は農民に還元されない政治体制だったら意味ないんじゃ)
(それはあるけど、だから輸入しないってのが正当化されるのか。輸入やめたら農民が今よりもっとひどい状態になるだけだよ)
(そもそも、一番儲かるのは農場を仕切ってるドールやデルモンテみたいな先進国のグローバル企業だったりね)
……etc


じゃあ有機農業!有機農業なら文句ないでしょ!ほらこの野菜は鶏糞堆肥で作ったんだよ。
(その鶏が食ってた飼料はアメリカから輸入したトウモロコシだけどね。で、そのとうもろこしは作られてる農場ではこれだけ農薬と化学肥料を使っててね、
水は地下水をポンプでこれだけ引き上げて使っててね、そのせいで地下水の枯渇が問題になっててね、日本に運ぶためにはこれだけの石油を使っててね………
それでも国産飼料だったらその値段でその野菜は作れてないよと。)飼料米?飼料米はいいね。補助金で支えながらもある程度飼料を国内で作ったほうがいいよね。バランスの問題だけど。

世界はこれだけ複雑に繋がってて、ひとつの答えですべて解決することはなく、
地球規模のフードシステムにかかる圧力は特定の方向からではなく、常に変化している。
しかし強固に見えるフードシステムも今やそれほど強固ではない。
フェアトレードやお気に入りの生産者を買い支えること、また不買運動などは小規模ながら影響力を増してきている。(花王不買継続中!)
想像力を働かせて、自分の購入したもの、支持するものがどんな影響を与えているのか考えて行動する必要がある。
そういう自分も、食品とPCパーツ以外の分野だととたんに想像する努力を放棄してしまう。今自分が履いてるこのユニクロのズボンがこないだ週間文春が書いたようなひどい労働環境の中国工場で作られ、
そもそも原料の綿花を栽培しているウイグルの綿花農場ではね…みたいなところに想像が及ばず、安いから買っちゃう。
あーでもパタゴニアは買わないけどね。


この本は読む所が多く、手元において煮詰まった時とかに引っ張り出して眺めたい本だ。
期日までには高岡中央図書館に返すけれども。
雨が降って稲刈りの予定が潰れると残念だが、本をレビューする時間もできるのでこれも悪くない。
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